伊豆の海岸林

2016.Mar.22

桜も開花し、いよいよ春が始まろうとしている今日この頃。この冬は近場で崖掘りばかりしていたので、久々に遠出をする機会を得て伊豆半島に材採集へ行くことにした。

狙いはハチジョウウスアヤカミキリと黒いヨコヤマトラカミキリ。どちらも有名な生息地なのでポイント情報は敢えて入手せず、航空写真と道路地図を眺めて探索エリアを選定。ハチジョウウスアヤは2008年に房総半島で採集し、ヨコヤマトラは材採集特別講座昨年の奥多摩で経験しているので、行けばなんとかなるはず。


朝5時に成田を出発し、都心を抜けて東名高速道路を走る。沼津から伊豆半島を南下し、天城峠を越えて南端方向へ。

午前9時、ようやく目的地に到着。伊豆大島を海の向こうに眺めながら、早速探索開始。

ここでの狙いはハチジョウウスアヤカミキリ。メダケを求めて脇道に入っていく。

適当に材を選んで割ると、糞がぎっしり詰まっている。この状況、狙いの虫ではないことがすぐわかる。

さらに割っていくと、食痕の途中に空洞が見つかった。

中には成虫が鎮座していた。


ササセマルヒゲナガゾウムシ

かなり久しぶりに見る、大型のヒゲナガゾウムシ。

成虫の先には幼虫も入っていた。そっと戻して材を竹藪に置き、先へと進む。

海岸沿いを歩いていくと、前方にメダケ群落らしきものが見えた。

とりあえず、ここで本格的に探索開始。

房総半島でつかんだ穿孔サインを探して、枯れたメダケを眺めていく。そして、1本の材を選んで割ってみる。

粗い繊維でつくられた栓が出現。さらに先へと割る。

すると栓がもうひとつ出現。これは期待が持てるので、さらに慎重に割っていく。

しかし、出てきたのは幼虫。破片を元に戻してテープで巻き、持ち帰ることに。

その後、しばらく粘ってみるものの、幼虫が2個体追加できたのみ。海岸沿いをもう少し歩いて別のメダケ群落でも探してみたが、追加なし。時間だけを浪費する結果となった。密度が低い場所なのだろうか。

次の場所へ移動しようと車に戻る途中、見覚えのある光景に足が止まった。

グミ類の幹からヤニが出ている。2006年12月に山梨の河川敷で見たのと同じで、これはおそらくスカシバガ幼虫の仕業。

樹皮をめくってみると、予想通り幼虫が見つかった。この大きさなら今年成虫になるはず。グミ食いのキオビコスカシバになることを期待して飼育することにする。

ちなみに、樹種を帰宅後に調べた結果はマルバグミ。幼虫はグミ類ならなんでも食べるので、近所の雑木林でツルグミを探してみよう。

遅めの昼食をとった後、次は黒いヨコヤマトラを狙うことにする。このエリアにはホストのオオバヤシャブシが生えていないかったので、目星をつけておいた海岸線へと向かう。

しばらく車を走らせて、目的地に到着。

すぐそばには青い海が広がっている。

道路脇の林にはオオバヤシャブシ。

花は盛りを過ぎて地面に落ち始めており、若葉が伸びてきている。木の本数は多くないが、狙いを絞りやすく虫も集中しやすいので好都合。適当なところに車を停めて、探索開始。

木を眺めていると、明らかに不自然な切断痕が目に留まる。どうやら先行者がいたようだ。昨シーズンなのか今シーズンなのかはわからないが・・・。今シーズンであっても、すべての個体を採り尽くすことはできないはずなので、集中して枝先を眺めていく。

しばらくして、怪しい枝を発見。

秘密兵器を伸ばし、つかみ取る。

残念ながら、ハズレ。

次の枝を探そう。

次は、こんな枝。

期待の持てる食痕が伸びているが、残念ながら途中で行き止まり。

次を探そう。

今度こそ・・・。

遂に、蛹が出現。

枯葉でフタをして、紙テープで巻いて持ち帰る。この調子で次も探そう。

今度は、斜面の上のあの木を探そう。

車を見下ろしながら、枝先を見ていく。

本命とは関係ないが、不自然な切断痕がある枝が引っかかっている。ヒメカミキリ類の幼虫の仕業とわかってはいるが、手に取ってみる。

粗い木屑で栓をした、特有の穿孔サイン。これも春には成虫になるので持ち帰ってみよう。

写真には撮っていないが、風で折れた枝の先に潜っていたヨコヤマトラらしき蛹を1つ確保。追加を求めてさらに探索を続ける。

しばらくして、細い枝先に穿孔サインを発見。

割ってみると、蛹が出現。しかし、体型からみてシナノクフロフかキクスイモドキだとすぐにわかった。

この直後、最初に見つけた蛹もヨコヤマトラではないのではという疑念が湧く。


最初に撮った蛹

デジカメの画像と記憶を確認すると、ヨコヤマトラではない可能性が高い。虫眼鏡を持ってきていなかったことが悔やまれる。でも、ちょっと前に確保した蛹は間違いなくヨコヤマトラのはず。

その後も探索を続けるが、見つかるのはシナノクロフ・キクスイモドキばかり。ハチジョウウスアヤで予想以上に苦戦したので、もう残り時間がない。心残りだが、1つの蛹に望みを託すことにしよう。

深く青い海を見ながら、帰途につく。キオビコスカシバ幼虫という思わぬ出会いもあり、充実した1日だった。帰りは渋滞にはまってしまい、成田に着くまで6時間半。


翌日、持ち帰った蛹をもう一度確認。シナノクロフ(暫定)、シナノクロフ(暫定)、・・・・・。そして、最後の1つ。現地でヨコヤマトラと判断した蛹。

たぶん、大丈夫なはず。結果は数日後。

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