奥多摩:栗の花咲く尾根

2016.Jul.6

7月に入り、梅雨とは思えない真夏の暑さで平地は早くも夏枯れの気配。奥多摩は例年なら季節が盛夏に移り、夏の虫が一気に出てくる頃でもある。

いくつかの情報では、平地に比べて花暦は少しゆっくり進んでいる印象。例年の開花状況を基に推定すると、クリの花がちょうど満開になるはず。花掬いで得られる奥多摩のカミキリムシはかなり採ってきたが、なかなか出会えない種も意外と残されている。久しぶりの雨で一休みした虫たちが、明日は活発に活動することだろう。午前中は花掬い、昼から夕方は立ち枯れ・倒木見回りという計画を立て、電車に乗り込んだ。


22時、奥多摩駅に到着。路面は濡れているが、雨は止んでいる。


蛾像収集のため、いつもの場所へ。

ヘビトンボ

夏になると1匹は必ずここに飛んでくる。


ホソバトガリナミシャク

今日の新顔。気温が低いこともあって、個体数・種類数ともに少なめだった。

翌朝、5時起床。雲がすぐ近くの山まで降りてきている。早く晴れると暑さで虫が隠れてしまうので、しばらくはこの状態が良い。始発バスの乗客は私を含めて2名のみ。運転手さん、車掌さんと4名で最奥の集落を目指す。

終点のバス停で降り、見頃を迎えたアジサイを見ながら歩いていく。

山肌はまだ雲に覆われているが、晴れる兆しはあるので先へ進む。

路面は乾きつつあり、外灯の下にはカラスに食われた大きなミヤマクワガタが点々と落ちている。


谷の様子

トチノキは手前・奥ともにたわわに実をつけている。

谷の奥にはわずかに青空が見えてきた。

雲が消える前に到着するべく、登山口へ。

霧に包まれた登山道を黙々と登り、雲の上を目指す。

途中、前回行方不明になった羽毛トラップを再発見。休憩も兼ねて回収に行く。

トラップの外側には小さな甲虫がくっついていた。


ヒメコブスジコガネ

前回の探索の時と同じ種が来ていた。ムツコブスジ、アイヌコブスジを期待していたのだが、残りのトラップに賭けよう。

尾根に出ると、さらに視界が悪くなる。

ミズナラの立ち枯れにも虫がまったく来ていない。とにかく、目的地へ進もう。

登山道には所々に黄色い花穂が落ちている。樹冠部で咲いているクリの花はもう盛りを過ぎているらしい。今日の目的地では開花が少し遅いので、ちょうど良いくらいだろう。

歩いているうちに、少しずつ周囲が明るくなってきた。

霧の中に木漏れ日が差し込む。

あっという間に霧は消え、夏の原生林が姿を現す。あとはクリの花までたどり着くのみ。

ようやく、今日の午前中の探索エリアに到着。クリの花はもうすぐそこだ。

9時40分、目的地に到着。クリの花は予想通り、ほぼ満開。

木の下には花穂がまったく落ちていない。これは期待できそうだ。

さあ、今年はどのカミキリムシに出会えるだろうか。


ジュウシチホシハナムグリ

個体数は少ないが、採れる時はまとまって網に入る。


ミヤマクロハナカミキリ

この花掬いでのカミキリムシ第1号。


オオアワフキ

アワフキムシとしては桁外れの大きさに驚く。


ゴマダラオトシブミ黒化型

通常型も一緒に網に入った。久しぶりに見る。


ヒメシロスジベッコウハナアブ♂
シロスジベッコウハナアブ♂

生きている時は白い腹部が美しい。


コマルハナバチ♂
マルハナバチの一種♂

オスは刺さないので手づかみ撮影。


ヤマトキモンハナカミキリ

ここではクリの花といえばこのハナカミキリ。個体数も多い。

だんだん日差しが強くなってきた。花を少しでも見渡せる位置に移動して、梢付近を掬う。


ルリハナカミキリ

意外にも、これが奥多摩自己初採集。ずっと狙っていたものの、なかなか出会えなかったので嬉しい。和名のとおり美しく輝く瑠璃色の上翅。これだけで花掬いをしに来た甲斐があった。


ツマグロハナカミキリ

このあたりでは全体黒色の個体ばかりなので、これは非常に珍しい。


アオアシナガハナムグリ

このハナムグリを見るとブナ帯に来ていることを実感する。


ニッコウホシシリアゲの仲間

オスの腹部背面に細長い棒状突起があるのが特徴。初めて見るので同定は標本作成してから。

だんだん日差しが強くなってくるとともに、虫の飛来数が減ってくる。正確に言えば、飛来しても隣接する木々に止まってしまい、花に来ないようだ。周囲の木の葉を掬うと、ヤマトキモンハナカミキリばかりが入る。

虫の飛来状況が悪くなるばかりなので、11時を過ぎたところで花掬いはひとまず終了。今度は林内の立ち枯れを巡ることにしよう。


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