海浜のグミ群落

2017.Mar.1

3月になり、早春の虫の動向が気になる今日この頃。この冬のゴミムシ屋としての活動はまったく成果がないので、冬場の採集の終盤はスカシバガ屋として活動してみることに。

今日の狙いはグミ類に穿孔するキオビコスカシバ。院生時代に河川敷のグミ林で初めて採集した思い出のスカシバガのひとつである。今回の探索場所は海岸で、昨年夏に幹から突き出た蛹殻を目撃している。生息は確実なので、発生木を見つけられるかどうか。良い天気なので怪獣2号を連れて、探索に出発。


10時、目的地に到着して探索開始。

砂浜と住宅地の間にはこのような草原が延々と広がっている。所々に生えている灌木が今回の狙いの樹種。

このように、ある程度まとまって生えていることが多い。


ナワシログミ

グミ類には何種かあるが、これは海岸に多く生えているらしい。

下草をかき分けて幹をチェック。この株は傷ひとつない健全な状態だ。

株はこの先にもたくさんあるので、ゆっくり調べていこう。

一般に樹皮に傷ができると幼虫が穿孔しやすくなるが、この株は幼虫の痕跡なし。

ある程度太くなっても樹皮が裂けてこないので、幼虫は穿孔しにくいのかも。

しばらく歩き回って、ようやく幼虫の気配を感じる木を見つけた。

樹皮を見ても、今までの株と違う。

樹皮が大きく裂けていて、樹液も出ている。この下に幼虫が穿孔しているに違いない。剪定鋏を取り出し、樹皮を剥がす。

幼虫の食痕を発見。あとはこれを追いかけていくだけ。

丸い糞が詰まっているのを発見。きっとこの近くにいるに違いない。

その直後、蛹室と蛹殻が見つかる。もしかして、すでに羽化した古い食痕だったのか。しかし、食痕をよく見るとまだ続きがあり、まだ希望はある。

分枝の方へ向かっていくと、白い幼虫を発見。

ようやく見つかった。潰さないように慎重に取り出す。


キオビコスカシバ幼虫

昨年3月に伊豆の海岸林で見つけて以来となる。

腹部第8節の気門が著しく背方に寄るのがスカシバガ科の特徴のひとつ。
(気門は普通なら体の側面に位置し、背面からは見えない。)

メイガ科などには見られない特徴なので、間違いないだろう。

追加個体を求めて、別の発生木を探すことにしよう。

歩いても歩いても、同じような景色が延々と続く。グミ類が次第に少なくなり、やがて完全に姿を消した。

実はこのあたり、2011年の東日本大震災で津波に飲み込まれたらしい。それにより、すでに松枯れで弱っていた松林が塩害によってほぼ壊滅。

あれから6年が経つが、一度失われた林はそう簡単には戻らない。かつて松林が広がっていたことは、所々にみられる伐採木からかろうじて読み取れる。場所によっては松の植樹も行われているが、元の姿に戻るにはまだ時間がかかりそうだ。

この先を歩いていってもグミは全くなさそうなので、引き返すことにする。

帰りはちょっと違ったルートを歩き、見落としていた有望株を発見。この株を見て、遠目からでも発生木を見抜くコツに気づいた。最初の発生木と共通する特徴があるのだ。

近寄って見ると、すでに羽化脱出した痕跡があちこちに。

真新しい糞もあったので、ここを掘ってみる。

すぐに、幼虫を発見。

この時期になると日中は暖かいので幼虫も活動できるのだろう。

発生木を見抜くコツもわかったので、今日はもう十分。ちょうどお昼になったので帰途についた。

昼食は道の駅の名物「いわし丼」。


持ち帰ったキオビコスカシバ幼虫のうち、一番大きな幼虫は加温して飼育。


キオビコスカシバ蛹 
(3月17日蛹化)


キオビコスカシバ成虫
(4月5日羽化)

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