奥多摩:2週連続の林道

2017.June.10

長竿の破損で予定の探索ができなかった今年初の奥多摩探索。季節は待ったなしで進んでいくので、のんびりしている暇はない。すぐに釣具屋で新しい長竿を手に入れ、網枠も軽くて硬いものを購入。6月に出現するカミキリムシを狙って、再び林道を歩くことにした。


日付が変わる頃、奥多摩駅に到着。

いつもの通り、いつもの場所へ。LEDライトがついに壊れたので、ホームセンターで新しいものを購入した。さっそく点灯してみると、今までのものとは比べ物にならないほど明るい。技術の進歩はめざましい。


ゴマケンモン

ウメノキゴケのような美しい緑色なので見つけると必ず撮影している。


ムラサキアツバ

名前のとおり紫色に輝く翅が魅力。奥多摩では初めて見る。


ヒメクロホシフタオ

今夜の新顔のひとつ。シャクガに似ているがツバメガ科。

翌朝5時、起床。空はよく晴れている。乗客もまばらな始発バスに乗り、集落を目指す。

先週とあまり変わらぬ景色を眺めながら歩いていく。集落の中のクリの木は出穂したばかりだった。


谷の様子

緑が少しだけ濃くなった気がする。

先週と同じ林道を進んでいく。

雨が少ないため水溜りや浸み出し水の規模は小さくなっている。


ミヤマカラスアゲハ

まだ時間は早いが吸水に訪れる個体も見られた。

今日の目的は先週できなかった林縁スウィーピング。良さそうな場所は前回見ているので、そこまでは網を出さずにひたすら歩く。


ススバネナガハナアブ♀

ふと下草に眼をやると日光浴している姿が目に留まった。これから活動を開始するのだろう。

しばらく歩いて、先週のハナアブポイントに到着。

橋の下にある材にはまだ日が当たっておらず、ハナアブの姿はなし。前回見た珍しいハナアブを目当てに、帰りにもう一度寄ることにしよう。

そろそろ良さそうなエリアに入ったので、長竿に網をとりつけてスウィーピング開始。ここぞという場所を選んで掬っていくが、狙いのカミキリムシはそう簡単に入らない。ビーティングと同様、地道な採集方法。


ホソヒゲケブカカミキリ


カッコウカミキリ


ヒトオビアラゲカミキリ

スウィーピングしながら歩いていくと、1本のクリの木まで来た。かつて花が咲き始めの時に掬ってカンボウトラカミキリが入ったことがある木だ。

穂が出始めたばかりで開花はあと2週間先だろうか。小規模ながら部分枯れもあるのでその部分を重点的に掬う。


ハイイロツツクビカミキリ

狙っていたカミキリムシのひとつが網に入った。自己初採集。長年見つけられなかったが、ようやく出会えた。追加個体を狙って他の部分もくまなく掬うが、この1匹のみ。先へ進むことにする。

しばらく進むと、伐採木が集められているエリアが見つかった。樹種はシデ類が混ざっており、鮮度も良い。まだ午前中なので虫の集まりは悪いはずだが、一応覗いてみる。


シロトラカミキリ


タテスジゴマフカミキリ

午後になればまた違った顔ぶれになるはずなので、先へ進む。

雲取山登山道との分岐を過ぎると林道の自然度は一気に高くなる。


ニホンザル

久しぶりに近くで見ることができた。

そして、林道の終点に到着。

徒歩ではさらに奥へと進むことができる。

このあたりが本当の終点。さらに沢沿いに道しるべのテープは続いているが、このあたりで引き返すことに。


クロマルエンマコガネ♀

立ち枯れに静止していた個体を採集して、林道へ戻ることに。

午後に再びチェックする場所を思い出しながら、ゆっくりと林道を引き返す。

まずは終点付近の斜面上に見えたミズナラ倒木。遠目には良い物件に見えたのだが、近づいてみると鮮度が悪く虫がほとんど来ていない。夕方になれば甲虫が集まってきそうだったが、そこまで滞在できないので潔く諦める。

しばらく歩くと、行きの時には気づかなかった一角に眼が止まった。

ヤマブドウとツルウメモドキが絡み合い、部分的に枯れている。もしかしてあのカミキリムシがいるかもと思いつつ、軽い気持ちでスウィーピング。

網の底には1匹のカミキリムシが入っていた。


クビジロカミキリ

鳥の糞に似た模様をしている渋いカミキリムシ。自己初採集。奥多摩では古い記録が1例あるので探していたが、ようやく出会うことができた。

ふと右隣に眼を移すと、ツルウメモドキの枯蔓が結構ある。軽く掬って1匹落ちてきたのだから、思い切りビーティングすれば追加が得られるかもしれない。


シロオビチビヒラタカミキリ

期待に反して、この1匹が落ちてきただけ。材ではたくさん得ているが、野外では初めてなので良しとしよう。

しばらくスウィーピングしながら進むがめぼしい成果はなし。そして、伐採木のエリアに到着。斜面に降りてじっくり見てみることにしよう。


トガリバアカネトラカミキリ

キクイムシとみられる羽化脱出孔に産卵していた。

ほかは採集優先のため手づかみ撮影のみ。


ヘリグロベニカミキリ


カラカネハナカミキリ


ピックニセハムシハナカミキリ

この他、チチブニセリンゴカミキリらしき姿も見たが取り逃がす。

しばらくすると雲行きが怪しくなってきたので先へ進む。

だいぶ歩いてハナアブのポイントに到着。

倒木には日光が当たるようになり、ハナアブも来ている。


ヒメハチモドキハナアブ♂


ニトベナガハナアブ♂

この2種のみで、先週出会った珍種は姿を見せなかった。

ハナアブのポイントを後にしてしばらく歩くと、再び太陽が顔を出した。もう一度伐採木まで戻りたいところだが、時間的に厳しいので断念。

スウィーピングも飽きてきたのでほとんどすることなく、たまに目についた虫を採る程度。


ヒゲナガアリノスアブ

林道脇の下草に止まっていた。自己初採集。


トゲアリノスアブ

同じ状況で発見。自己初採集。

舗装道路まで戻って来たところで最後のひと叩き。


コブスジサビカミキリ

クズとともにここまで進出してきたと見られ、舗装道路では確実にみられる。

さらに、見慣れないハナアブが葉の上にいたので網を振り抜く。確実に仕留めたと思ったが、網の中に入っていたのは全く違う双翅目だった。


ネグロクサアブ♂

クサアブ科に属し、日本産双翅目の中では巨大な部類に入る。メスはさらに大きい。存在は知っていたが、実際に生きた状態で見るのは初めて。偶然ではあるが、最後に良い虫に出会えて良かった。

新たに2種のカミキリムシと出会うことができ、午後は双翅目にも恵まれ、満足しながら帰途についた。

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