多摩川:冬枯れの河川敷

2017.Feb.12

暦の上では立春を過ぎても季節はまだまだ冬。暖かい日には野外を飛ぶ小さな虫の姿もみられるが、その他多くは冬眠中。とある美麗ゴミムシを狙って近場の谷戸を密かに探索しているが、未だ遭遇できず。

あまりにも虫が採れないので、気分を変えて河川敷へ行ってみたくなった。電車が大好きな怪獣2号も楽しめる場所ということで、多摩川中流域へと向かうことにした。


電車を乗り継いで11時半に現地到着。澄んだ空気のおかげで奥多摩と丹沢の山々はまるで手が届きそうなくらい。その向こうには真っ白い富士山もくっきりと見える。

電車を見つけて上機嫌で歩き出した怪獣2号をうまく誘導して河川敷へ。鉄橋を渡る電車を眺めながら昼食をとり、探索を開始。

このあたりは建造物や水辺に向かう踏み跡が所々にあり、それに沿って進んでいく。洪水の時にしか水が流れない水路を見つけたので近寄ってみる。

オギが根をしっかり張っていて、一見するとゴミムシが越冬していそうな気配。しかし土が予想以上に緩く、ゴミムシ1匹すら出てこない。

崖を伴った水路はそう簡単には見つからないので、倒木狙いに切り替える。

しかし、乾燥が厳しいからか地面に伏していても朽ちることなく硬いまま。とても削る気にはなれない物件ばかり。

何本目かの踏み跡でようやくヤナギが多い林に当たる。立派な立ち枯れが見えたので、まずはそこに向かう。

直径60cmほどの立派なヤナギの立ち枯れ。しかし、非常に目立つため先行者によって削られていた。人口の多い都市部の河川敷では先行者はよくあることなので仕方ない。

それにしても、一体何を狙ってここまで削ったのだろうか。

その削り跡のそばでモンスズメバチの古巣を発見。
(2017.2.24追記 当初はアシナガバチの古巣としていましたがsundogさんにモンスズメバチのものと教えていただきました。)

古い巣といえば、蛾の幼虫でもいるかもしれない。

そう思った瞬間、見つけた。ただ、この状況では生きた植物を食べてた種が偶然紛れ込んだ可能性も否定できない。

巣の端の方を調べて見ると、糸で綴った痕跡があった。クモのものとは様子が違い、これは鱗翅目幼虫の仕業。

そっと崩してみると、幼虫が姿を現した。

メイガの幼虫のようだ。ハチの巣を食べるようなものは手に入れておきたいと思っていたので、この機会を逃さないよう巣ごと持ち帰って飼育することにしよう。

さらに、立ち枯れの一部が折れて近くに転がっていたので少し削ってみる。

見覚えのある大きな虫糞が出てきたのでたどっていくと、幼虫が姿を現した。


カブトムシ幼虫

雑木林の虫というイメージが強いが、河川敷にも意外といる。洪水により朽木が定期的に供給されるので幼虫の生息には都合が良い環境なのだ。これも持ち帰って飼育することにする。

その後、特にめぼしい物件には出会わず。根返りの土を崩してみたりするが、アカシマサシガメが出る程度。

水辺に近いヤナギの根元には大量の漂着物。しかし、崩してみてもマイマイカブリの姿はない。

以前、オオヨツボシゴミムシを掘り出したのもこの近くなのだが、いつの間にかニセアカシアが勢力を拡大してこの一角を占領する勢い。

このニセアカシア、ゴミムシの視点からみるとかなり厄介な存在。ヤナギと違って枯木はいつまでも固いままで、虫たちの越冬には適さない。さらに、ヤナギをはじめとする河川敷の他の樹木と共存することなく、駆逐してしまう。遠目には緑の林でも、越冬するゴミムシの視点から見れば砂漠のような林。まだヤナギが残っているうちに除去の手が入ることを願いつつ、帰途についた。


約一か月後の3月、モンスズメバチの巣で見つけたメイガの幼虫が成虫になった。


ギンモンシマメイガ

図鑑を見てみると、幼虫はスズメバチ類の巣を食べると書かれていた。

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