2018.Nov.9
奥多摩の探索エリアには大きく分けて3本の林道がある。そのうちの1本は1960年代にカミキリ屋で賑わった林道で、道沿いに花が多いこともあり大学1年~3年まではよく訪れていた。その後、原生林に踏み込んでからは足が遠のいてしまい、2年に1度くらいのペースで歩く程度となっていた。
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2011年3月11日の東日本大震災により、林道の手前から通行止め。かつて通った原生林への登山口にも行くことができなくなる。<すぐに開通すると思っていたが、落石対策の洞門建設などをするという。新たな登山道から工事現場をたまに覗いてみることがあったが、作業の音が聞こえないことも多く、遅々として進まず。従来、あれだけ無防備な状態でも大勢の人が通行してきたというのに、何を今さらと思っているうちに、7年の月日が流れた。
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2018年10月1日、工事の完了とともに通行止めが突然解除される。あの登山道はどうなっているのか、あの木はどうなっているのか。すでに林道上ではカミキリムシの季節は終わっているが、来シーズンに備えて一度自分の足で歩いて、確かめておくことにしよう。
10時、奥多摩駅に到着。空は雲で覆われており、予報では次第に雨が降ってくるらしい。
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冬の到来が近いことを告げる雪虫があちこちで飛んでいる。
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駅構内がこの冬に改修されるようだ。
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第3便のバスに乗り、いつもの場所へ。平日なのでバスは集落を抜けて、終点の谷へ。
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谷の様子
トチノキは完全に落葉しているが、他の樹種は見頃。
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外灯に集まる虫はどうだろうか。
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カバエダシャク
とても新鮮な個体で、紅葉した葉と同じ色。
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ケンモンミドリキリガ
こちらは地衣類に似た色彩。季節は晩秋に向かいつつあることを確認して、先へ進む。
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関所があった場所
すでに撤去され、奥には新しい洞門が見える。
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かつては崖側に高い落石防止柵のみがあったが、約5年間の工事でこんなものに変わった。
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林道起点の道標
1960年代にカミキリ屋を呼び寄せた林道工事はここから始まった。それから半世紀以上が経った今日、狙いの虫は定めず、気ままに歩いてみよう。
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少し進むと新しいゲートが出来ていた。一般車両進入禁止となっているが、歩行者は大丈夫と判断。
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懐かしい景色を見ながら落葉が降り積もる道を進んでいく。
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かつての浄水場
7年前まで集落の水道を支えていた施設。今は浄化槽にシートが張られ、稼働停止中。
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さらに進むと、倒木を発見。車が通れるように処理はされている。
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樹種はモミで、谷の上から滑り落ちてきたらしい。来年まで残っていると、きっと様々な虫が飛んでくることだろう。
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橋を渡り、対岸へ。
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少し進むと、道を塞ぐ倒木。樹種はツガ。少しビーティングしてみたが、エゾサビカミキリが落ちてきただけ。
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周囲の灌木も一緒に叩いたらマダニが落ちてきた。かつて林道上ではまずお目にかかれなかったので、湿度が回復している証拠なのかもしれない。とりあえず、先へ進む。
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あちこちにある小規模な土砂崩れが7年の歳月を感じさせる。
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大きな石は落石防止ネットを突き破る。
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大木が倒れれば谷側の柵も簡単に破壊される。
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人や車が通らなかったことで、路上には下草が復活。虫がいそうな雰囲気が漂う。
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標高が上がるにつれ、紅葉が一面に広がる。この天気だからこそ、趣が感じられる。
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ゆっくり歩いたので、林道の半分ほどで引き返す。もう少ししたら雨が降ってきそうだ。
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それでも、ついつい林縁をビーティングしながら歩いてしまう。
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ツノゼミ
Butragulus flavipes
久しぶりに見るととてもカッコイイ。
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時折風が強く吹き、たくさんの木の葉が舞う。雨が降り出すまで、あとわずか。
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最後に、かつての登山道を少しだけ登る。セダカには良さそうな状態が保たれている 。時間がないのでまた今度にしよう。
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そして、林道起点に戻ってくる頃には降り出す。
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洞門の中には照明もある。どうせLEDライトなので虫は期待せず素通りしようと思ったが、それでも、わずかに虫が来ていた。
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ヒメヤママユ
秋の深まりを感じさせる大型の蛾。
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ミツモンキンウワバ
秋によく見られるキンウワバ。
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ツノアオカメムシ
まだ生き残っていたようだ。
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ヒメササキリ♀
こちらもまだ生き残っていたようだ。
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集落の途中で後ろを振り返ると、山々は水墨画の世界。
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オオチャバネフユエダシャク
集落内の外灯のそばに1頭だけ居残っていた。見るのは初めて。
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バスを待つ間に雨は止み、日差しが戻る。
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バスが出発する直前、反対側の山からは虹が伸びていた。
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車窓から見る、歓待の桜。来年も見事な花を咲かせることだろう。
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いつもの時間に電車に乗っても、この空色。これで、今年の奥多摩探索は終了。長い冬を乗り越えて、来年はどんな虫が林道を飛び交うのか。今からとても楽しみだ。