阿波國のセダカ探し

2008.Aug.23-24


翌朝、身支度を整えて、6時に山へ向けて出発。昨日は見えなかった頂上が、今日ははっきりと見える。

6時50分、昨日セダカを見つけた9合目に到着。今日は霧に覆われていなくて、林床も比較的明るい。

さあ、セダカを探しに森の中へ。

まず目についたのは、ヒサカキの伐採枝。目視で探すのは面倒だったので、すばやく叩き網に移す。

軽く叩くと、丸まった枯葉がポロポロ落ちてきた。さて、セダカはいるだろうか。

お、この触角は・・・。


サヌキセダカコブヤハズカミキリ♀

今日はビロウドカミキリには化けなかった。新成虫なのだろう、とてもきれいだ。昨日採ったのはもっと触角が長く、♂だったことが初めてわかる(♀だと思ってた)。

「もう、新成虫が出てきていて、枯葉に潜り込んでいる」

2匹目が採れたことで、今後の探索の的が絞れた。

続いて見つけたのは、ヤブツバキの伐採枝

なかなか良い鮮度で、セダカの食痕もたくさんついている。これは、複数個体がいるに違いない。今度は、目視で探してみよう。

目視を始めて1分で、葉の上に静止する♀を発見。さっき採った個体よりも一回りほど大きい。

「これは生態写真撮影のチャンス」

カメラを構えるが、薄暗いため失敗ばかり。そうこうしているうちに、ポロリと落下してしまった。

しかし、あわてることはない。他の枝に衝撃を与えないよう細心の注意を払いながら、落下点付近の枯葉を両手でわしづかみにする。

キィ キィ キィ キィ・・・・・

「よし、つかんだぞ。」

そのまま叩き網の上にばらまき、枯葉をかきわける。


サヌキセダカコブヤハズカミキリ♀

今回はうまく回収できた。

さらに探索を続けると、別の部位で♂を発見。樹皮をかじっていたようだ。ややピンボケだが、本日もっともまともに撮れた生態写真。

結局、この伐採枝では2個体のみであった。枯葉の状態をしっかり記憶してから、先に進む。

頂上を超え、昨日は行けなかった北斜面に足を踏み入れる。ヒサカキやヤブツバキの幼木があるところを除けば、樹相こそ違えども、なんとなく奥多摩に似ている。とりあえず道沿いに歩いて、めぼしい枯枝があったら斜面を降りることにしよう。

まずは、道沿いにあったヒサカキの枯枝。幼木が途中から折れていて、枯葉が申し訳程度にぶらさがっている。パッと見てセダカはいなさそうだったが、念のため叩いてみる。

小さな♂が落ちてきた。こんなところにも来るとは、かなり意外。

しばらく歩くと、ヤブツバキの枯葉があるのを発見。すぐに急斜面を駆け下りる。

隣にある倒木に直撃されて、途中から折れてしまったらしい。うまい具合に先端が地面に接しており、セダカが登りやすくなっている。

葉は適度に丸まっており、触ってみるとまだ柔らかい。しかし、期待に反して、ちょっと見ただけではセダカの姿は見えない。

これだけのごちそうを、セダカたちが見逃すはずがない。70cm x 70cm の叩き網ではすべてをカバーできないほど大きい枯枝のため、なるべく多くの部分を網で受けられるように計算してから、一気に枝を動かして、叩く。

正直、びっくりした。一度に4匹も落ちてくるなんて。

もう、これ以上採ってはバチが当たりそうなので、下山することにする。

登りとは別ルートを通って、石段の道に合流することにする。ツチイロフトヒゲカミキリ狙いで地面すれすれの枯葉を叩くが、かすりもしない。

昨日、雨が降る前にひそかに仕掛けておいたコップを回収するが、自分のトラップセンスの無さを痛感するだけであった。

石段を下る途中、ところどころ展望が開ける場所があり、吉野川によって作られた広大な平野が眼下に広がる。

登山口付近まで戻ってきて、頂上を見上げると、また雲がかかっていた。今日も雨が降るのだろうか。

麓の直売所で、ナシを買っていく。いつも行くスーパーの半額くらい。

乗り換えには1時間かかったが、成果があったので苦にならない。(学部1年生の山陰遠征で経験した3時間待ちに比べれば、なんのその。)

高速バスは座席指定をしてなかったため、補助席での乗車となる。

「モミ林では、今頃オオトラカミキリが幹を伝って降りてきているのだろう」

そんなことを想像させる厳しい残暑の中、静かに阿波國を後にするのだった。


初日の雷雨の時はどうなることかと思ったが、目的のサヌキセダカコブヤハズカミキリに出会うことができ、生息環境を見て、探し方のコツをつかめたことで、わざわざ単身泊りがけで来た甲斐があった。摩耶山でこれがそのまま応用できるかどうかはわからないが、機会があれば挑戦してみることにしよう。


今回得られた最大の個体

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