2009.Oct.11
午前4時30分、携帯のアラームが鳴る直前に起床。下弦の月がほのかに山々を照らす中、寝袋をたたむ。
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気温は、5℃ (4:40)。院生時代の野外調査「霜降る夜の野宿」を思えば、とても暖かい。亜高山帯はおそらく氷点下になっているだろう。
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夜が明ける前に、朝飯前の一仕事である蛾像収集へ。遠目からでは電柱にほとんど虫が止まっていないが、長竿で枝葉を掬ってみると、意外と多くの鱗翅目が集まっている。
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キトガリキリガ
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ウスムラサキトガリバ
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フタテンナカジロナミシャク
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ウスキツバメエダシャク
ウストビモンナミシャク
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ホソバミドリヨトウ
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いずれも秋を感じさせる種類であるが、すでに何度か見たことがあるものが多い。その場で名前がわかるものに出会うと、なんだかうれしくなる。
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集落の近くまで来た頃に、夜が明ける。谷底から霧が吹き上がってきて、幻想的な雰囲気に包まれる。
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集落を抜け、待ち合わせのバス停へと向かう。ペプチドグリカンAから始発バスに乗ったという連絡を受け、急いで朝食を取り、荷物をまとめる。
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6時55分、始発バスが到着。漆黒の昆研パーカーを身にまとい、ショルダーバッグを肩にかけ、右手には長竿。2年前と変わらぬ姿で、ペプチドグリカンAが降りてくる。
「バイト後に3時まで実験して、負のエネルギーを溜めてきました」
この心意気、さすが2006年の昆虫研究会会長である。
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積もる話もそこそこに、さっそく錦の輝きを求めて探索開始。奥多摩の急峻な山に人知れず点在するツゲを、ひたすら見てまわる。
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第1ポイント
ここは今年5月に羽化殻を発見した場所である。
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おそらく日陰を好むと思うので、林内のツゲを重点的に見ていく。高い所にある枝も、長竿を伸ばして丹念にスウィーピング。同時に、地面に光輝く脱皮殻がないかもチェックしていくが、手がかりは得られない。
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第2ポイント
ここは丈が低い株が並ぶ。
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比較的開けていて、かつ日陰になっている。なかなか良さそうなのだが、姿は見えない。
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目で見て確認できなかったら、ビーティング。
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ヤガの幼虫が落ちてきた。岩場の珍蛾オオキイロアツバと思い、真剣に採集してタッパーに確保(しかし、帰宅後に調べてみるとどうも別の種類のようだ)。ここでも、カメムシの姿はない。
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次のポイントへ向かう途中、ヤマグワの古木ポイントを案内する。昆研関係者で話題のトラフカミキリの話や、ギガンテアの妄想を語りあううちに、ペプチドグリカンAが虫影を発見。
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枝にしがみつく、この時期としては大型の甲虫が見えるだろうか。
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キボシカミキリ♀
農工大農学部の桑園では駆除に困るほど生息しているのだが、奥多摩のこのエリアに限れば、かなりの珍種なのである。所有権は放棄されたので、私がありがたくいただく。オスもどこかにいるはずだが、見つからないので先へ進むことに。
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第3ポイント
ここは日当たり良好。上空を飛ぶニシキキンカメからも発見されやすいポジションに生えている。ここでもビーティングとスウィーピングをしたが、影も形もない。
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第4ポイント
ここは日陰になっている。
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数株ほど点在するツゲを分担して探索していると、ペプチドグリカンAが驚きの声を上げるが、すぐに落胆の声に変わる。
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近寄って、その原因を撮影してみる。
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中央部分に虫影が見えるだろうか。
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アカスジキンカメムシ幼虫
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この発見で、いくつかの情報とヒントが得られた。
「葉と葉の間に隠れていると、かなり見つけにくい」
「目視で見つからなくても、叩いたり掬ったりする必要がある」
「同様な越冬様式のアカスジキンカメが樹上にいたということは、ニシキキンカメもまだまだ越冬態勢には入ってないはず」
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見つけた虫が狙いの種でなくても、そこから何らかのヒントを得て、探索に生かしていくことは重要なことである。探索に必要な感覚を共有し、さらに気合を入れて探し続ける。
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しかし、相手は生き物なので、結果が伴うとは限らない。私の叩き網にもアカスジキンカメムシ幼虫が落ちてきたくらいであった。
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さて、これで無名のツゲ群落はすべて見終わってしまった。時間は、まだ9時を回ったばかり。こうなったら、超有名なツゲ群落へ行ってみることにしよう。
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透き通るような青空のもと、白い石灰岩が美しいこの集落のシンボルへ。かつては年に1度、村人総出でこの岩に登っていたそうだ。大勢の登山者に混じり、登山道を進む。
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普通の若者の体力で登れば1時間余りで頂上にたどり着くのであるが、意外と体力を消耗しているので休みながら登っていく。屋外実験系&野外調査系だった私とは対照的に、ペプチドグリカンAは室内実験系の研究生活を送っているため、スニーカーで斜面徘徊できる筋力は維持できてるようだが、社会人の私と同じく、心肺能力の低下が目立つようだ。
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急登の前に、ちょっと大胆に休憩を取る。沢沿いで石がゴロゴロしているこの斜面で、体力回復も兼ねて少し探索。
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ペプチドグリカンAが発見したのは、
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サンショウウオ
ハコネか、ヒダか、どちらか。
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クワガタムシ幼虫
私の見立てはスジクワガタ。果たして、何に化けるか。
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一方、私が発見したのは、
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ガロアムシ
幼虫は多いのだが、成虫は3匹しか見つからなかった。
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同じ場所を探していても、発見するものが重ならないのは面白いところ。ある程度体力が回復したところで、急登へ。
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体が慣れてきたからか、一気に登り切る。ここから先は岩場で、落ちたら命はない。昔の人は草鞋でよくこんなところに毎年登ってきたものである。
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頂上のすぐ手前になると、ようやくツゲが出現。青く輝く幼虫がいないか注意しながら進んでいくが、影も形も見当たらない。
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11時30分、頂上に到着。眼下には東京都最北の集落が小さく見える。荷物を置いてツゲをしばらく見回るが、株が多すぎて逆に見つかる気がしない。
原記載以降、約60年ぶりに再発見されてから、すでに17年が過ぎた。あの時、なぜニシキキンカメムシはここにいたのか? あと少し、生息環境に対するヒントが欲しい・・・。二人ともそう思いながら、昼食を食べる。
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もう、これだけ探して見つからないのだから、残念だが今日はもう探索を諦めることにしよう。
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さて、せっかく奥多摩までやってきたのだから、谷底でルリクワガタ類でも探すことにしよう。あれだけ苦労した登りに比べれば、下りはほんの一瞬。筋力さえ十分ならば、心肺に負担がかからないので非常に楽だ。
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先ほどの休憩ポイントに荷物を置き、思い思いに探索する。
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斜面を徘徊していると、小規模な伐採地を発見。ミズキの丸太が良さそうに朽ちているので、樹皮をめくってみる。
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食痕をたどっていくと、ハナカミキリ系の幼虫が出現。何に化けるか楽しみだ。
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次は、このフサザクラの朽木。
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ルリクワガタ♂
良好な腐朽部位は限定されているが、そこにしっかりと入っていた。残念なことに、撮影後にタッパーに入れようとして地面に落としてしまった。
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その後、追加を求めて探し回るが、焦れば焦るほど良い材が見えなくなる。
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マダラクワガタを見つけるのが精一杯。
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キイロスズメバチ女王
すでに越冬態勢に入っているとは、今年は秋が早い。
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一方、ペプチドグリカンAはもっと良い虫を発見していた。
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「これ、何の糞ですかね?」
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「これは、ハナムグリの糞だな。」
サワグルミの根際に小さな樹洞があり、そこに山積みになっていた。こんなものを見つけるセンスには、毎回ながら驚かされる。
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「オオチャイロハナムグリかもしれないよ。」
その言葉を信じて、枯枝を使ってかき出す。
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30秒ほどで、あっさりと幼虫が転がり出る。
「オオチャイロハナムグリに間違いない」
その時は、本気でそう思った。
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さらに掘り続けるペプチドグリカンAを置いて、周辺をもう一度探索。しばらくして戻ってくると、まだ掘り続けている。入り口は狭いが、意外と中は深いようだ。
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「繭玉が出てきました」
よくぞ壊さずに掘り当てたものだ。オオチャイロハナムグリにしてはちょっと小さいので、もしかしたらムラサキツヤハナムグリなのかも。正体が判明するのは、来年の5月くらいだろうか。3匹の幼虫が、何に化けるか楽しみだ。
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樹洞の突き当たりまで掘ったところで、フレークを中に埋め戻し、帰途につく。
「(2年前のように)また路上で幼虫が潰れていたらショックだな」
そんな冗談を言いながら・・・。
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14時40分、登山道入り口に到着。バスの発車まであと10分しかないので、バス停へ直行。
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光輝く2次元物体は当然のことながら見つからないまま、2台目のバスに乗り込み、奥多摩駅を目指す。このままのんびりと府中まで帰ろうと思っていたが、今日の探索を振り返りながらトンネルを過ぎた辺りで、バス停に忘れ物をしてきたことに気づく。仕方ないので、取りに戻ろう。
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研究室に戻るというペプチドグリカンAとは、残念ながらここでお別れ。学園祭での再会を誓って、満員のバスをまさかの途中下車。忙しい研究室生活を送っている中、2年前と変わらぬ姿で、一緒に夢を探してくれて、本当に、ありがとう。
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奥多摩駅からバス終点までは過去2度歩いたことがあり、舗装道路を歩くのはちっとも苦にはならないが、この1.1kmのトンネルを通るのは嫌である。
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今をさかのぼること30年余りのことである。行きのバスの車内放送では、その時のことをこう伝えている。
「・・・・天災により、突然山が大崩落。山々に破壊音が響き渡り、土煙は集落に舞い、日原川は水湖となり、集落は陸の孤島に。人々は自然の猛威に震えました。現在のトンネルは・・・・」
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トンネル内を走行する自動車の騒音や空気の悪さもさることながら、いつ崩れるかわからないという恐怖感に耐えなければならないのだ。
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10分間の苦行の末、再び爽やかな光の世界へ。せっかくなので、旧道と旧旧道を見てみることに。
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トンネル出口から左へ曲がると、今でも使えそうな看板が目に入る。
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封鎖されたトンネルが、旧道。その右手には、旧道ができる以前の道、旧旧道が伸びる。
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かつては舗装されていたようだが、今は落石で埋まっている。
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徒歩で安全に到達できるのはここまで。かつてこの道を行き来していたことに思いを馳せながら、バス停へと戻る。
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バス停に隠しておいた寝袋を無事に回収した後、最後の悪あがき。
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キイロスズメバチ♂
今が最盛期のようで、合計3個体採集。
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オオツヅラフジ
ニシキキンカメムシの成虫が吸汁するという。必ずしもこの植物に固執するわけではないそうだが、それでも、また一歩、近づいた気がする。
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錦の輝きは、またもお預け。簡単に出会えないからこそ、追い続ける価値がある。次なる作戦を練りつつ、奥多摩の地を後にした。
前回はあと一歩のところまで迫ったのだが、今回は知っているすべてのポイントを巡るものの、かすりもせず。おそらく、急峻な斜面に点在するツゲ群落を転々としながら分布東限のこの地で細々と世代をつないでいることだろう。次に私たちの手が届くところに来るのは、来年か、5年後か、20年後か、100年後か。いつになるかわからないけど、その時にその場にいられるように、これからも通い続けていたいものである。
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奥多摩駅の改札口へ入る直前、叩き網を持った人物を発見。なんと、昆研の先輩H氏であった。先月の対馬で初めて一緒に採集したばかりであるが、お互いのメインフィールドで遭遇するのは8年目にして初めて。
電車に揺られながら、虫の世界の深い話に引き込まれ、国分寺駅に到着するまであっという間だった。その中でも、もっとも衝撃的だったのは、次の会話。
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H「ところで、今日は何を狙いに?」
G「ニシキキンカメムシだったんですが、ダメでした」
H「・・・そういえば、今年の夏に拾ったな。潰れかけのを。」
G「どこでですか?」
H「奥多摩で。たぶんオレが踏んだんじゃないかな。」
“昆研の奥多摩四天王”の上に立つ存在、おそるべし。
後日談
11月上旬の学園祭で、標本を拝見。
たしかに、ニシキキンカメムシだった。
翌2010年1月中旬、ペプチドグリカン氏から連絡が入る。樹洞から掘り出した例のハナムグリ幼虫が無事に羽化したという。
ムラサキツヤハナムグリ
蛹の時点ではやくも種がわかってしまったそうで、現在は元気に昆虫ゼリーを食べているという。
「現地でのGenkaさんの予想が当たってうれしいような、少し残念なような(笑)」by ペプチドグリカン