2021.June.25
昨年の7月下旬はアサカミキリ再発見を狙って目星をつけていたアザミ群落を巡回していた。結果的には見つけられなかったが、可能性がある食痕と、発生時期のヒントを得る。それをもとに、今年は時期を早めて再挑戦することにした。
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しかし、今年は右膝半月板損傷という全く違った不安がある。2週間前に杖1本でリハビリ採集に行き、1週間前には杖を完全に手放したというものの、2ヶ月間全く体重をかけずにいた右足はすっかりやせ細ってしまった。しかも、筋力低下は見た目以上に著しく、階段の上り下りで右足に体重をかけると、その間だけ重力が2倍以上になる。さらに、動きを制限した影響で膝が深く曲がらず、関節部分がずれたような感触がまだ残る。
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それでも、杖を手放した当初はひどかった筋肉痛が、一週間のうちに徐々に軽くなり、緩い斜面までなら対応できる手ごたえを得た。後遺症とは一生つきあっていくことになりそうだが、そうならば、若いうちに勝負をかけるべき。そう言い聞かせて、奥多摩のアザミ群落へ。
9時20分、奥多摩駅に到着。相変わらず、人影は少ない。
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バスに乗り、昨年と同じ場所を目指す。
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しばらくして、最初の目的地に到着。遠目からその様子を見て、目を疑った。たくさんあったアザミの多くが草刈りで消えてしまっている。これは、完全に予定が狂った。
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それでも、こういう状況は逆にチャンスかも。残された株に虫が集中するはず。そう思い直して、アザミを一株ずつ丹念に見ていく。
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葉脈にわりと新しめの食痕がある。でも、これは細いのであの虫の仕業だろう。そう思っていると、近くでその虫が飛び立った。
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ヘリグロリンゴカミキリ
昨年は見つからなかったが、やはりいた。前胸背板に1対の黒点が出ており、珍しい。
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結局、残されたアザミの数は少なく、ほんの10分ほどで見終わってしまう。それらしき食痕もなし。
実際はもう少し険しい場所にもアザミは見えるが、今の右足のコンディションでは到達できない。完全にアテが外れてしまった。
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こうなったら、もう1つの目的地に行くしかない。昨年は雨でほとんど下見できなかったが、遠目で見る限りはアザミがありそうな場所。ただし、ひとつ問題がある...。
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それは、結構な斜面にあるということ。
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でも、近くに来てみるとアザミがそこそこ生えている。
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ここまで来たからには行くしかない。でも、歩けるようになったとはいえ、筋力は以前のレベルには程遠い。斜面でバランスを崩したら右足では踏ん張れず、転倒は免れない。健全な左足を軸足としながら、細心の注意を払いながら進んでいく。
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最初は恐る恐るだったが、歩き始めると意外と平気。
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それでも、油断禁物と言い聞かせながら、斜面に点在するアザミをひとつひとつ見ていく。
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アザミは広い範囲に生えているが、ほとんどのものは草丈が低い。
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おそらく、ここも定期的に草刈りがされることで草原環境が維持されているのだろう。
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1時間ほどかけて、だいたいの範囲を見終わった。狙いの虫の姿はなし。さらに、カツオゾウムシ類の姿も非常に少ない。
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葉裏に見られた食痕の中で、一番可能性がありそうなもの。ただ、カツオゾウムシ類の可能性の方が高い。
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もう一つ、こんな食痕も見られた。これも、カツオゾウムシ類の仕業なのだろうか。
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以下、探索中に見かけた虫を少々。
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ナキイナゴ
今年は鳴き声を聞くことができた。
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スジクワガタ♀
かなり遠くから見つけたため、少しドキリとさせられた。
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そろそろ足が痛み出しそうな感じなので、斜面徘徊を終了。場所を移動し、ポイント開拓を兼ねて歩きやすい道を進む。
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道沿いにモモの実を発見。
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大きさからみて、ハナモモだろう。それよりも、注目すべきは不自然にしぼんだ果実。これは、あの虫の仕業に違いない。
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周囲を探すと、その虫が見つかった。
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モモチョッキリ
色彩変異が結構あることが知られており、この個体は渋い藍色。さらに周囲を探して数頭追加することができた。奥多摩で探していた虫のひとつなので結構うれしい。
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ハナモモを後にして歩いていると、カミキリムシらしき虫影が道沿いを飛翔する。茶色の翅鞘が見えたので「シラホシかな?」と思ったが、一応、取り押さえてみる。
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シラホシキクスイカミキリ
なんと、予想に反して奥多摩自己初採集のカミキリだった。後輩が奥多摩で採っていたので、いつか自分で見つけたいと思っていた種。まだ触角が伸び切っていないようなので、このまま生かして持ち帰ることにする。
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しばらく進むと、アカマツの伐採木を見つける。切り口はまだ新しく、今年に入って伐採されたようだ。
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ツヤケシハナカミキリ
アカマツ枯木の定番のハナカミキリのひとつ。
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クロキボシゾウムシ
樹皮を少し剥がして発見。新成虫なのかもしれない。
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さらに、少し先にも別のアカマツ伐採木を発見。虫を探すため近寄って見ると、周囲を飛び回るハエに気づく。
でも、さらに近寄っても高度を上げずに飛び続ける。これは、ハエではない...。
そう気づくと同時に、両手で取り押さえる。
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アカマダラセンチコガネ
話には聞いていたが、飛び回る様子は本当にハエのよう。いずれ自力で出会いたいと思っていただけに、とても嬉しい。
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アカマダラセンチをタッパーに収納した後、改めてアカマツ伐採木を見て回る。
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オオコクヌスト
これが唯一の甲虫だった。
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この頃になると、雲行きが怪しくなる。そろそろ潮時ということで、バス停に向かう。
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奥多摩駅に着く頃には雨が降り出した。ちょうど良いタイミングで切り上げて良かった。
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当初の予定とはだいぶ違った結果となったが、モモチョッキリ、シラホシキクスイ、アカマダラセンチと、探していた虫3種に出会えたのが収穫。
さらに、結構な斜面徘徊をしたにも関わらず、右足は意外と耐えられることを確認できた(ただし、翌日になって少々腫れた)。
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肝心の狙いの虫だが、今年の結果を踏まえて、来年は探索範囲を少し変える必要がありそうだ。
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