2010.Jul. 26-31
2日目 27日(火)
朝6時、起床。小雨が降っている・・・。とりあえず、予定通り登山口に向かうとしよう。
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朝9時、登山口に到着。こちらは雨は降っていない。
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気温もそこそこある。
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身支度を整えて、登山開始。
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登りでは花を探してカミキリムシやハナアブを採集し、下りながらトラップを設置していくという計画である。
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雨が降る前に車まで戻るべく、早めに登頂したいところだが、引き付けられるものがあるとついつい寄り道してしまう。道端には、シナノキの幹に伸びるイワガラミ。花は終わってるが、なんとなく長竿を伸ばしてみた。
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さて、ハナカミキリ類でも何か入っていないだろうか。
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あれ、このシルエットは・・・。
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アカガネカミキリ
自分でも驚くような状況ではあるが、北海道特産のカミキリに、ようやく出会えた。飛翔能力を失って、豊かな森に生きるための形。3年前に本州の別亜種に出会って以来、久々である。これは、幸先のよいスタートだ。
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しばらく進むと、登山道からちょっと離れたところにショウマの塊を発見。マダニのことはお構いなしに、草原をかきわけて接近する。
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天気と時間帯の関係で虫は少なめだが、カミキリムシが動いていることに少し安心する。
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マルガタハナカミキリ
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ミドリカミキリ
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撮るよりも採るを優先したため、写真はイマイチ。夢中で甲虫を採集していると、マルハナバチに混じって違う羽音が聞こえてくる。
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フタガタハラブトハナアブ♀
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カオグロモモブトハナアブ♀
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ひととおり採集しても、次々とカミキリムシが飛来する。だが、ことごとくマルガタハナカミキリ・・・。まだまだ先は長いので、登山道へ戻る。ズボンを確認したが、マダニの姿はなく安心する。
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しばらく進むと、登山道脇に不自然な光景。
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大量の甲虫の死骸
主な構成種は、シデムシとゴミムシで、オサムシの姿はない。このすぐそばには、プラコップが初心者のような方法で埋められていた。中身はもちろん、大したものは入っていない。
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ふとズボンを確認すると、マダニの姿。北の神様からトラップ設置者への報復のつもりだったのだろう・・・。同じ甲虫屋として非常に残念な思いを胸に、この場を立ち去った。
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さて、ここからは草原地帯をひたすら登っていく。
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ショウマ類
オニシモツケ
アマニュウ
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甲虫に人気がある花が、あちこちに咲いている。東京の奥多摩の稜線部では、もはや失われてしまった光景である。ニホンジカの異常増殖・高地進出さえなければ・・・。
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道沿いに咲いている花を見ると、カミキリムシの姿が多い。それらを適当に採集しながら登っていく。
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ヨツスジハナカミキリ
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マルガタハナカミキリ
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ヤツボシハナカミキリ
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クロハナカミキリ
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フタスジハナカミキリ
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いずれも北海道以外でも見られる種類であるが、この環境の中で生きている姿を見られること、それだけで満足だ。
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8合目あたりになると、ピンク色のお花畑が広がるようになる。
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ヤナギラン
昨年の南アルプスでは花期には早かったため見られなかった。晴天の下で見るよりも、曇天の方が鮮やかに見えるのかもしれない。
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振り返ると、札幌の街並みがかすんで見える。山頂まであと一息、噴出する汗をぬぐいながら進んで行く。
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11時、山頂に到着。この時点で、小雨が降っている。
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気温は20℃。登山で体温が上がっているので今はなんともないが、汗がいつまでも蒸発しないのでこのままでは風邪をひいてしまう。
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昼食を食べ、天気が悪化する前に下山することにする。
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帰り道は舗装道路を歩く。ゲートがあって一般車両は入ってこないので、安心して脇見ができる。
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まずは、ヤマアジサイの花。集虫力はそれほど高くないのだが、他に花がない時は必ずチェック。
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キタセスジヒメハナカミキリ♀
北海道に分布する数少ないピドニアのひとつ。本州にもいるが、自己初採集である。
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他にはヨツスジハナカミキリがいたが、さすがに採集しなかった。
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しばらく歩くと、側溝が出現。これを見ると覗き込んでしまうのは、甲虫屋の習性だ。
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ヒラタシデムシ
側溝にはミミズがよく落ちていて、それを捕食する昆虫も集まってくる。その中でも、ヒラタシデムシは個体数が最も多い。
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そして、しばらく側溝に沿って歩いていくと、大型の黒い甲虫が目に留まった。
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イシカリクロナガオサムシ
北海道での記念すべき初オサムシ。フ節を見て、オスと判明。本州のクロナガオサムシとはずいぶん雰囲気が異なる。
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その隣にもう1匹いた。交尾器が露出していることからわかるように、これもオス。防御物質を放出されないよう、慎重に生け捕りにする。
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オサムシがいた辺りはこんな環境。この調子で光り輝くオサムシも見つけたいところだが、すでに雨は本降り。やがて側溝にも水が流れ始め、側溝探索は諦めざるを得なくなった。オサムシは壁面を登れるので、大雨が降る前に側溝を脱出してしまうからだ。
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意気消沈しながらも、トラップを少しだけ仕掛ける。マダニが嫌なので奥には入らず、林縁でわずかなコップで勝負。獣被害を避けるため、誘引源は90%酢酸。果たして、どうなるだろうか。
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トラップ設置後、順調に下山していくものの、やがて、雨粒が大きくなって土砂降りになる。寄らば大樹の陰ということで、緊急避難。
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だが、ここで何か気配を感じる。
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なぜなのかは自分でもよくわからないが、部分枯れの下で、草がまばらになっているわずかなエリアに、周辺視野が反応する。
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そこには、虫の影。
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トドマツカミキリ
本州にもいるが、自己初採集。
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驚いたことに、わずか1m四方に4匹もいた。おそらく、私と同じく雨宿りをしていたのではないだろうか。
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雨が弱まるのを待つ間、この木の周りにもトラップを設置。雨が少し弱くなったところで、再び舗装道路に戻る。
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札幌の街並みが見える頃には、雨はほとんど止んだ。それでも、雲は途切れることなく東から流れてくる。
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14時半、駐車場に帰り着く。長竿を叩き網に持ち替えて、再び登山道へ。
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とりあえず、例のシナノキへ。きっと、叩けば何かが起こる、そんな予感があった。
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それは、現実のものとなる。羽化脱出して間もない個体で、まだ赤みが強く体も軟らかい。これで、1ペア揃った。
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この直後、また大雨が降り出す。このままビーティングを続行する意欲がなくなり、退散。
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雨はなかなか降り止まず、1時間半ほど某施設の軒先に閉じ込められる。
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16時、ようやく雨が上がった。残った気力を振り絞り、トラップ設置に出かける。
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2ヶ所ほど仕掛けたところで、またも雨が降ってきた。山頂付近のトラップは、もうダメかもしれない。絶望感に襲われながら、撤収。
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車をコンビニまで走らせて、夕食。その後、灯火ポイントまで移動して、意識を失う。
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22時、目が覚める。お守りによれば、気温は20℃くらい。虫が次々と飛来するような条件ではない。それでも、一応、見てみることにしよう。
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ミヤマクワガタの頭部
お守りの贈り主が見たら、何と言うだろうか。ひとまず、天気さえ良ければ飛来することがわかったので、明日以降に期待することにしよう。
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外灯を歩いて巡っていると、暗がりで大きな影が動いているのに気づく。その独特なシルエットにより、ライトで照らさずとも正体はすぐにわかった。
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エゾマイマイカブリ
今回の遠征でぜひとも会いたかった種類のひとつ。個体数は多くて側溝やトラップで楽に採集できるとされるが、この天候で巡り合えたことは非常に嬉しい。
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この調子でいろいろな虫に出会えるかもと一瞬だけ気分が高揚したが、冷静になって状況を分析してみると、外灯や自販機に集まる鱗翅目も絶対数があまりにも少ない。これでは、甲虫は飛ぶことすらままならないだろう。今晩はもう寝て、体力を温存することにしよう。
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